季節の便り

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「今週末には、各地に紅葉の便りが届きそうです」
――と、朝の天気予報で聞いたので、部屋の窓を開けておく事にした。

机に白紙の便箋を広げながら、今年もこの時期が来たなと思う。
季節を運ぶ風の便りは日々方々から届くけれど、木枯らしに寄せて軽やかに舞い込む紅葉の便りは、豊かな秋の彩りを感じられる贅沢な一通だ。手紙好きならずとも楽しみにしている人間は多いだろう。

午後の向かい風が便箋をはためかせ、ふと気付けば艶やかな消息がしたためてあった。
椛に銀杏、蔦楓。行間のまにまに漂う様な錦織りの散らし描きを眺め、燃え立つ山々と唐紅に染まる谷川に思いを馳せる。

さて、返事を何と返そうか。
便箋の端にこぼれた一葉を拾い上げ、風雅を解する麗しきペンフレンドに宛てて筆を走らせる。


風向きが変わって、追い風。
切手代わりに、赤く色づいた庭のサンザシの実をひと粒乗せ、小さな往復葉書を送り出した。
ファンタジー
公開:24/10/28 15:06
ラジオ『月の音色』 月の文学館 テーマ:手紙

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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