鉛色の恋文

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はぁ…。便せんを一行うめて、溜息。
「恋ちゃん好きです。僕と、つ、付き合っ…あ~ムリ!」
また失敗。鉛筆の『好き』を消しゴムで消す。手紙ならと思ったけど、口で言うより恥ずかしい。破けた便せんを丸めてゴミ箱へ。
隣の席の恋ちゃんはクラスのアイドルだ。ぐずぐずしてたら他の奴に先をこされる。
…ふう。紙くずだらけのゴミ箱を見て、また溜息。
間違えた。字が汚い。文章がダメ。ただでさえ苦手な国語、ラブレターなんて無理だ。はぁぁ…。

つき過ぎたため息がもくもく上って雲になった。失敗ラブレターを食べ、窓の外へ泳いでいく。
走って追いかけた先で悲鳴が響く。
「きゃあ!」
文字の土砂降りを浴びた恋ちゃんの、白いワンピースが鉛筆色に染まった。
おしまいだ、完全に嫌われた!

溜息の雲が晴れる。
「きれーい。文君ありがとう」
鉛筆の芯みたいにきらりと光る、鉛色のワンピースを着た恋ちゃんが、太陽みたいに笑った。
青春
公開:24/10/28 15:05
ラジオ『月の音色』 月の文学館 テーマ:手紙

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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