分岐点

あの会社は落ちたなと思いながら帰路につく。面接官に言われたことがずっと心に残っている。あはは、考えが足りなかった。
帰る途中、駅で苦しそうな人を見かけた。けれど俺は見て見ぬふりを選ぶ。俺じゃなくていい。俺よりすごい他の誰かがやってくれるだろう。
けれど、誰も行かない。
誰が行くんだ？本当に誰も行かないのか？俺が行っても意味ないんだよ。俺じゃなくていいんだよ。そう言われて納得してるし、その方がみんなにとって良いんだよ。俺じゃなきゃダメな理由なんてどこにもないよ。誰でもいいよ。気付いた奴が行けよ。
なのに身体は動いてしまった。足りない頭でやらない理由を考えていたけれど、俺にはそれが出来なかった。

後日、俺は助けた人からお礼の言葉をもらった。あと少し遅れていたら、亡くなっていたかもしれないと聞いた時は驚いた。これは俺がやりたくてやってたことだ。けれど、それにお礼を言われるのはなんか不思議だ。