オプションソファー

その街は、余りにも五月蠅かった。
都市開発により工事が昼夜問わず行われ、轟音が四六時中響いた。
N博士はそれを心底嫌った為、オプションソファーを発明した。白いカプセルの球状をした装置で、様々な機能がある。

「開けゴマ!」

という声に反応し、カプセルの扉が解錠される。
博士は中に乗り込むと、機内のソファーに腰を下ろし、肘掛けに付いている青いパネルを操作した。
カシッと施錠されると、音楽が流れた。
機内はオプションにより、程よい気温に保たれ、新鮮な空気で満ちている。
身の回りの事は全て自動化され、隔てられた空間に騒音は存在しなかった。

そして、ゆっくりと時間が流れた頃、孤独感に襲われた。
しばらく対話相手がいない生活をしたからだ。

「開けゴマ!」

ギギッと鈍い音を立て、開いた扉の先は、見慣れた光景とは似ても似つかなかった。
錆びたビル群が瓦礫になるのを見て、膝から崩れ落ちた。