読書サロン(B1 21:00~)

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「なんとお孫さんでしたか。確かに面影がおありだ。若い会員は敬遠されがちですが、貴方なら大丈夫でしょう。早速拝見してもよろしいかな。
ほう、これは麗しい。え、ああ、建前は読書会ですからね、本から取り出して露骨に閲するのはマナー違反です。見開いた頁のなかで密やかに愛でるのです。
ほほ、恥ずかしがっていますね。これは上物だ。お祖父様の蔵書に、まだこんなものが。
この娘が気の毒? 気になさるな。これは栞。閉じ込められる運命。目で嬲られ、犯されるものなのです。
おっと、怒るか。まあ落ち着け、座りたまえ。皆さん失礼、つい議論が白熱してしまって。ここは読書会だ。私の持ってきた本も読んでくれるかな。古い戯曲だ。若く愚かな男が年寄りの蒐集品を盗もうとして失敗する話だ。貴方も私らの生き甲斐を取りあげなさんな。くれぐれもね」

老人の本にも栞が挟んであった。栞のなかで、苦悶の表情をした男が声もなく叫んでいた。
ホラー
公開:24/10/23 14:04
更新:24/10/27 12:45

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