味覚の、

秋が来る。
この時期は暑くなったり寒くなったり何かと目まぐるしい。
それもそのはず。夏や冬そして春までしきりに秋を覗きに来るのだ。
なぜアイツだけが「味覚の秋」と賞賛を受けるのだろう。夏にはスイカ、冬はカニ、春なら筍に自信がある。それなのになぜアイツだけが。
彼らはさりげなく顔を見せては栗やさつまいも、サンマなどを摘まみ食いしてみる。あまりの美味しさについつい頻繁になり他の季節と鉢合わせすることもあった。
食べ過ぎて丸々太った夏を見て春と冬は来年もまた猛暑になるじゃないかと責めたてた。
ダイエットしろ。夏痩せしろ。
季節が入り乱れ収拾がつかないので秋がまあまあまあまあと顔を出す。
一年中僕だけじゃつまらんでしょ。
確かにそうだ。
肝心なのは季節のフォーメーション。四季だけに。
秋の味覚はそろそろ来年にとっておきましょうか。冬がカニを撫でながら言った。
そうでなければ、
飽きが来る。