ドアの向こう側

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とある町にとても裕福な家族が暮らしていた。その家は、一代で財を成した主人とその妻、その夫婦から愛情をめいっぱい受けている一人の娘が暮らしていた。家には、この家族以外にも、お付きの者や家政婦がせっせと働いている。ドアマンもおり、扉は全て彼らが開閉していた。
娘は外に出たことがない。勉強も入浴も睡眠も何から何まで自分の部屋で完結していた。それくらいには裕福で、なんでも与えられている。そのため世間知らずも甚だしく、洋服のボタンも自分で止められない。ドアの開け方すら知らない。
勉強をしているとき、娘は思った。
この部屋の外はどういうところなのか。
怖いのか、楽しいのか、娘はなにも知らなかった。
娘は外に出たことがない。自分でドアを開けたことがない。
この家には不思議なところが一つある。娘の部屋のドアだけ鍵がない。ドアマンもいない。開けたことがないから知らなかっただけだ。どこかにこんな歌があったな。
その他
公開:24/10/19 08:28
更新:24/10/19 08:51

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