探し物

1
3

もぐらは道を作っていた
花も咲かない砂漠で
星も見れなくなった明るい街で
もぐらは海を見るのが好きだった
どこにでも同じ姿の海が
ゆったりとなびく表面が
柔らかくこの世界の大事なものを包んでいるようで
吸い込まれるように
海に入る
毛が濡れて重くなる
体が沈んでゆき
激しく揺さぶられる
息が漏れる
柔らかな海などない
胸が
喉がしまる
もぐらは思い出す
砂漠の寒い夜に星空が描かれること
街の植木鉢に咲く花の綺麗なこと
幸せだったんだ
口からこぼれる気泡はのぼっていく
肺が水で満たされる
その他
公開:24/10/18 00:00

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容