悪魔

「お願いします！ママの命を助けて下さい！」
悪魔である我は幼子の願いを聞き、召喚に応じた。
『よかろう。魂と引き換えに母親を救ってやろう…』
幼子は我の言葉の意味を理解していない。単純に助けてもらえるものだと思ってか無邪気に喜ぶ。
我は幼子の母親を見て驚いた。その女は行方不明中の我の母だった。
聞けば母は十年前に召喚されるもエクソシストとの戦いで傷つき、悪魔としての力を失ったらしい。
それから今まで人として暮らしていたが、ついに限界が来たようだ。
話を聞いた我は母を一度、魔界へと連れ戻した。そして今一度、幼子に悪魔を召喚するよう命じる。
その召喚に応じ、現れたのは母だ。魔界の空気を吸って、悪魔としての力を取り戻し元気になった。
再会を喜ぶ母と子。
我は願いを叶えた代償として母の悪魔の魂を頂く。これで母は今後人として生を送れるだろう。
弟よ。感謝する。こんな我でも、親孝行が出来たのだからな。