窓からの景色

北極海を潜水艇で調査していると窓の向こうにありえないものを見つけてしまった。
人魚だ。それも半透明の人魚だ。人というより、天女に近い。着物のようなひらひらが私の目を奪う。その美しさに言葉を失う。
「おっ！運がいいな。あれはクリオネの人魚だ。滅多に見られるもんじゃないから、その目に焼き付けておけ」
ベテラン操縦士が人魚に潜水艇を近付ける。こちらに興味を持った人魚が近づいてくる。
近くで見るとより美しい…この美しさと感動をカメラに収めようとするも、撮影したそれはピンボケ写真みたくなってしまった。
クリオネの人魚は潜水艇の周りをひらひらと舞う。まるで竜宮城にいる気分だ。
そんな人魚の頭が突然パカッと割れる。それを見た私は思わず悲鳴を上げた。
「落ち着け。バッカルコーンだ。そいつ、お前さんを餌と思っているようだぞ」
人魚の割れた頭から現れた無数の触手が何度も目の前の窓を叩く姿はただただ怖かった。