腸クリーンセンター

数日前からあった腹痛。ついに耐えられなくなり、腸クリーンセンターを受診した。
医師はガラス窓の向こう側で腹部エコーの機器を遠隔操作している。俺は寝っ転がりながら、モニターと、内部から聞こえてくるやり取りに耳を傾けた。
「食い過ぎの夜通し作業、マジパネェ」
「おれたち夜間作業員をコキ使い過ぎ！」
モニターには２つのモヤが映っている。腸クリーンセンターは腸ぜん動の可視化と彼らが発する声の取得に成功したのだ。なるほどこれが噂の世界初最新鋭技術かと俺は感心した。
俺の腸ぜん動作業員たちはなおも会話をつづけた。
「っつうかさぁ、作業放棄すれば良くね？」
「だよな〜。いまからやるか？　ストライク」
「それを言うならストライキだろ！　だれが野球やれと」
「バッターアウト！　この体の持ち主もアウト！」
「秀逸！」
「あいつ、こいつ、どいつ！」
「ハハハッ！」
恥ずかし過ぎて、俺は気を失った。