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男は砂漠で迷っていた。つい今しがた水も尽きた。
あと何日の間生きていられるだろう。

三丁目の饅頭屋の蒸し饅頭をもう一度食べたいと思った。
商店街の煙草屋の美代ちゃんの笑顔をもう一度見たいと思った。
川辺りの子どもたちの歌声をもう一度聞きたいと思った。

価値ある人生。
こんなとこでくたばってる場合じゃない。
頭上に浮かびつつある天使の輪をむしり取り男は一歩を踏みしめた。
公開:24/10/05 06:00
更新:24/10/05 06:17

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