うどんぶらこ

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あと1本、短いうどんの端切れを食べれば完食のはずだった。それなのに、その1本がお椀の中で泳いでいる。

うどんぶらこ。うどんぶらこ。

見ているうちに愛着心が湧いてきて、私はそのうどんを飼うことにした。うど犬と名付けた。

成長には運動も必要だろう。位置について、よーい、うどん!うど犬は大好物の天かすを目掛けて精一杯泳ぐ。

うどんぶらこ。うどんぶらこ。

1ヶ月経つとお椀には入り切らない大きさになり、お風呂で飼うことにした。2ヶ月経つ頃には縄跳びほどになり、3ヶ月後、とうとう海に放すことにした。

つるるっ。うど犬は悲しそうに鳴いた。

「ばいばい。魚なんかに食べられちゃダメだからね。」
そう言ってお別れをした。

翌日のこと。
「今朝のニュースです。漁師達によりますと、巨大なうどんに巻き付いたわかめが大量に採れましたが、喜んでいた隙にうどんの方はつるっと逃げて行ったそうです。」
ファンタジー
公開:24/10/06 20:22

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