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それはそれは、巨大な入道雲だった。

「やばー」

折り畳み傘を右手に、窓際に立つ女の子が呟いた。
クラスメイトも、彼女とともに入道雲を眺めている。

「早く出ないと、降られそうだね」

隣にいた男の子が、彼女に向かってそう言った。
ほら行こ、と男の子は彼女の左手を引っ張った。

彼女はどこか、嬉しそうだった。

「わたしたちも行こっかー」

クラスメイトたちも、ぞろぞろと、彼らに続いて教室を出る。
この後大雨かもしれないのに、カラオケに行くようだ。

「…」

クラスには、隅っこの僕らだけが残った。

「お、おれらもいく?」

「も、もう少し、ま、待とうよ」

もう一度入道雲に目をやったが、やっぱりそれは、大きかった。

僕らの青春は、これでいい。
青春
公開:24/09/30 21:42

( Rice Castle )

温かいのが、いちばんよね。

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