窓からの景色

「ねぇ、見て！つい買っちゃった！」
妻が嬉しそうに見せてくるそれは全文が英語で書かれていて僕にはちんぷんかんぷんだった。これ何？
「月の土地の権利書よ。１２００坪が２７００円で買えたの」
月の土地って安いのな。まあ、今は人が住める場所ではないし、この権利書に拘束力はない。ジョークグッズみたいなものだろう。
「…私ね、死んだら宇宙葬をお願いしようと思ってるの」
遺骨や灰を宇宙へと飛ばすっていう、あれ？
「うん。宇宙葬で私の購入した月の土地に行ってね、そこで地球を眺めるの。その為にカプセルには窓を付けてもらう予定よ」
お月見ならぬ地球見か…悪くないね。
「それでね、子孫たちに『お婆ちゃんはお月様にいるんだよ』なんて伝えてもらってね」
おいおい。行くのは君だけなのか？僕も一緒にいちゃダメかい？
「あなたも宇宙に来てくれるの？」
窓からの景色を独り占めなんてズルいじゃないか。君を一人にさせないよ。