窓からの景色

生前に自身のお墓を購入する人がいるように、昨今では生前に自身が葬儀で入る棺桶を購入する人が増えている。
どうせ燃やすんだから…と安い棺桶に入れられる事を嫌ってか、自身で素材から選ぶ人も増えて来た。
海葬・宇宙葬・樹木葬と葬儀のバリエーションも増えている。それぞれに合った素材を選ぶ事は、そうした葬儀に対しての礼儀でもある。
また、棺桶の中に生前の宝物・趣味のものを入れて欲しいという要望もある。その為の空間を作るのも、職人たる私の仕事だ。
試しに棺桶に入ってみる人達。狭すぎないか、広すぎないか、しっかりと確かめる。
棺桶の蓋を乗せ、その小窓から見える景色に「もうちょっと窓を大きくしてもらえますか？」と注文される事もある。
「お別れに来てくれた人たちの顔をちゃんと見ておきたいからね」
命はなく、目を閉じていても見えるものはある。と話すお客様。
それがどんなものかは、死んでからのお楽しみだそうだ。