名画でショート027『十字軍のコンスタンティノープルへの入城』(ウジュール・ドラクロワ)

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第4回十字軍は、実に奇妙な戦争だった。
十字軍は、イスラム教徒から聖地パレスチナを解放するために結成されたはずだった。
キリスト教徒による、キリスト教徒のための軍隊。
ところが、勇ましく攻め込んだ先は、同じキリスト教徒の国、東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルだった。
十字軍の騎士たちは同じキリスト教徒たちの街に火を放ち、抵抗するものを殺し、財産を奪い、捉えた捕虜を縛り上げる。家族を守ろうとする老人が道端に転がり、殺害された女性はそのまま放置され、町中には空けられて投げ捨てられた宝石箱が散らばる。
この戦いを描いた絵画で十字軍たちが掲げているのは黒い旗だ。この歴史的蛮行に対する画家からの哀悼の意だろうか。
背景の青空は、黒い煤によって覆われようとしている。
まるで、聖なる戦いを、汚したものたちを非難するかのように。
その他
公開:24/10/01 23:45

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