南国の鳥

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心安らぐ音楽に眠気を催していたが、いつのまにか本当に寝ていたようだ。
私は夢のなかで、南国の鳥になっていた。
照りつける太陽の下、終わりなき緑のジャングルのなかを低空飛行したり、気まぐれに果物をついばんだり、空高く舞い上がっては機嫌よく歌う。
ここには私を束縛するなにものも存在しない。願わくば、残りの命をすべてこの体に注ぎ込み、自由を満喫しながら一生を終えたい……。

夢から醒める瞬間は唐突に訪れた。
「はい、今日はこれで終わりです。お疲れ様でした〜」
「え? あ……ありがとうございました」

歯医者の治療に来たのだか、熟睡しに来たのだか、あやふやなまま会計を済ませる。
待合室のモニターには、南国の美しい鳥たちの映像が流されていた。私は熱に浮かされたように、ペットショップに向かった。
その他
公開:24/09/27 21:46
更新:24/09/27 21:49

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。

清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)

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