過知(あやまち)

「そーいやさ、俺昨日やべぇウワサ聞いちまったよ。」
「はいはい、今度は何？」
「老衰ってさ、死ぬ時クソ痛いらしいぜ。」
「え？」
「どっかの大学の研究でわかったんだって。尿路結石より強い痛みがずっと続くとか。」
「へぇ〜…それやばくね？」
2049年、噂はこうしてじわじわと広まっていった。
老衰を避けようと、暴飲暴食したり病院をサボったりする人々が激増した。結果、人口や医者は激減した。

噂が当たり前になった頃、追加の事実が発覚した。老衰にかかわらず、どんな死因でも同じ現象が起きてしまうという。
残された人々は、必ず来る惨憺な結末に震えた。

考えた末、脳科学はタブーとし、この事実を抹消した。

そんなこともすっかり忘れられた頃、子供たちは平和な昼を過ごしていた。
「おいおい、もう4098年も後半だぞ？はええな。」
「それな、やべぇよ。」
「そーいやさ、俺昨日やべぇウワサ聞いちまったよ。」