0
5
「お母さん、肩叩き券出してくれよ」
後ろから急に長男の声が聞こえてきたものだから、驚いて腰を抜かすところだった。
「しばらく見ないと思ったら……今までどこでどうしてたの?」
「そんなことはいいからさ、早く出してくれよ。久しぶりに肩をもんでやりたいんだよ」
あまりにも切実に訴えるので、小言は封印した。私は引き出しから、後生大事にしまっていた長男お手製の肩叩き券を出した。
「すっかりボロだなぁ」と苦笑いしながらも長男はそれを受け取り、私の肩叩きを始めた。
「いつの間にか、大人になっていたんだね」
「そりゃそうだよ。もう五十年経つんだから」長男はあっけらかんと笑い、「いつも仏壇に好きな菓子をありがとう」と続けた。
目をつむれば、今でも産まれた日のことが思い出される。しかし長男は先に逝ってしまった。先天性の病気が原因だった。
「長生きしてくれよ、お母さん」
溢れた涙は、いつまでも止まらなかった。
後ろから急に長男の声が聞こえてきたものだから、驚いて腰を抜かすところだった。
「しばらく見ないと思ったら……今までどこでどうしてたの?」
「そんなことはいいからさ、早く出してくれよ。久しぶりに肩をもんでやりたいんだよ」
あまりにも切実に訴えるので、小言は封印した。私は引き出しから、後生大事にしまっていた長男お手製の肩叩き券を出した。
「すっかりボロだなぁ」と苦笑いしながらも長男はそれを受け取り、私の肩叩きを始めた。
「いつの間にか、大人になっていたんだね」
「そりゃそうだよ。もう五十年経つんだから」長男はあっけらかんと笑い、「いつも仏壇に好きな菓子をありがとう」と続けた。
目をつむれば、今でも産まれた日のことが思い出される。しかし長男は先に逝ってしまった。先天性の病気が原因だった。
「長生きしてくれよ、お母さん」
溢れた涙は、いつまでも止まらなかった。
その他
公開:24/09/26 16:29
☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。
清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選
ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)
コメントはありません
ログインするとコメントを投稿できます