最後の晩餐の料理人

いらっしゃいませ。そして、お悔やみ申し上げます。
ここはあの世のレストラン。本日亡くなられたお客様におかれましてはこれより、最後の晩餐を召し上がっていただきます。
お客様の記憶にあるものでしたら、何でもお作り致します。

…かしこまりました。
なお、亡者の食欲は底なしなのでご満足いただけるまでご堪能下さい。

お客様。ご満足いただけたでしょうか？
こちら、隠し味にお客様の未練を使っております。未練を全て飲み込んだ事で後顧の憂いは断たれましたでしょう？
なお、先程の料理の材料はお客様の記憶でございます。それを食べ切ってしまったので、もうお客様に料理の記憶は残っていないでしょう。ご安心下さい。記憶からその味が消えてしまっても、お客様の舌がその味を覚えております。
故にこの先の閻魔裁判では嘘をつかない事をお勧めいたします。
嘘をつけば、思い出の味が詰まったその舌を閻魔様に引っこ抜かれますからね。