一子相伝のミートソース

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隣町のイタリアンレストランは平凡な店だが俺のお気に入り。なかでもミートソースパスタが絶品。何度も通ううちに親しくなった店主にミートソースのレシピを教えて欲しいと言った。店主は俺が同業者ではと警戒したようだが、俺がただのフリーターでただただミートソース好きだとわかるとレシピを明かしてくれた。しかし家でレシピを見て作っても店のミートソースには及ばない。ひき肉とタマネギなどいい材料を買って作ってもそこそこの味。店主に話すと、店主は笑ってレシピ通りではこのミートソースは真似できないと言う。俺が熱心に何度も作るのをみて、店主は実は秘伝の技がある、教えるかわりに俺にこの店を継いでくれと言う。俺は声をつまらせながら言った。レストランをやる気はない、ミートソースが本当に好きなんだ、いっそミートソースになりたいほどに、と。
翌朝、目覚めると俺は鍋の中にいた。ねとねとべたべた俺は熱いミートソースになっていた。
その他
公開:24/09/28 17:57

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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