死神爺さん

近所の銭湯に変な爺さんが時折現れる。
その爺さんの口癖は「大丈夫大丈夫」。どんな悩みも爺さんにかかれば、大丈夫の一言で終わってしまう。
俺が昔、彼女にフラれた時も爺さんは「大丈夫大丈夫」と笑った。
「その悩みなら枕を北北東にして寝るといい」そんなアドバイスまでもらった。
その晩、枕を北北東にして眠ったところ、翌日には今の妻との出会いに恵まれた。爺さん様様だ。
しかし襤褸を着たり、枕の位置を指定してきたり、まるで落語の死神に出てくる死神みたいな爺さんだ。
爺さんは人の不安や心配事を殺してくれる。
そんな爺さんは銭湯で大人気の存在。誰もが爺さんに相談する。
今日も爺さんは湯船で相談を受けていた。
爺さんは徐々に顔を顰め「だいじょばないだいじょばない」と真顔になる。
爺さんはそいつにふっと息を吹きかけた。するとそいつは湯船に倒れ込んだ。
急ぎ救急車を呼ぶ。しかしそいつは帰らぬ人となってしまった…