バックミラー

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乗り込んだ瞬間から車内の異様な空気が気になった。
「私、霊感が強いんです」
運転手は穏やかに笑ってから、
「このあたりは夜になると気味悪いですよねえ。こないだのお客様も薄気味悪がっていました」
「大人のクセに怖がりで」
「同じです。私も夜の仕事が多い割に怖がりでね」
バックミラーの運転手の目が笑った。
「こないだ韓国のショートホラーを観たのがいけないの」
「え、どんな話なんです?」
「タクシーのトランクを開けたら人の足が見えて。あるはずのないものがごろんと転がってるの」
運転手は無言になった。
バックミラーでしきりにこちらを見るのがわかる。とても目を合わせることができない。
沈黙の続く夜の道。
ホラー
公開:24/09/24 16:13
更新:24/09/24 16:16

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