駆け込み需要

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 商品棚に積み上がった米を見つけて男は安堵した。
「新米か。でも高いな」だが背に腹は代えられないと購入する。異常気象による不作や、災害不安による需給逼迫で米への駆け込み需要が加速した。それは度重なる値上げでも発生する。煙草は何度目かの値上げの時に、えいやと辞めた。だが米はそうはいかない。煌々と光る電柱の下、5kgの重みを噛み締めながら家路を急いだ。
 アパートに着くと人影があった。丁度切れかかった蛍光灯の下にいて、誰か分からない。
ただあの部屋の前なら岸だろう。彼は物知りで馬が合う。
「やあ、売れない小説家君」岸は今いくらかは知らない煙草を吸っていた。男は米を掲げる。
「今日は買えた小説家だ。そういえば小説家にも駆け込み需要があったよ」上を指さす。
見え上げた物知りは即答した。「2027年で製造終了か」
「こんな表現が通じるのも数年か」
その繰り返す不規則な点滅は、2人の笑顔を点滅させた。
その他
公開:24/09/25 23:56
更新:24/09/26 06:17

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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