名画でショート026『聖セシリア』(グイド・レーニ)

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白いターバンを巻いた彼女は、牢獄に閉じ込められていた。
頭上からは一筋の光が差し込み、彼女の上半身を照らす。鮮やかな赤色のドレスが、牢獄の中で場違いのように輝く。
彼女は異教の罪で三日後には斬首されることが決まっていた。
それでも、彼女は唯一の楽しみである楽器と歌を手放すことはなかった。音楽が奇跡を起こすことを信じて、彼女は歌い続けた。娯楽が少ない時代だ。刑務所の兵士たちも、異教徒ながら、彼女の音楽を楽しみにしていた。
奇跡を願う彼女の思いは、ほんの少しだけ届いた。
処刑台で斬首執行人は彼女のことを惜しいと思い、わざと首筋を外した。3回連続して外したところで死刑は中止され、ふたたび牢に閉じ込めれらた。
皇帝も彼女のことを処刑しなければならない立場ではあったが、彼女の才能を愛していた。
致命傷は免れたとはいえ刀傷は重く、彼女は3日後に死んだ。
彼女は最後まで楽器と歌を手放さなかった。
その他
公開:24/09/25 18:00

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