イヤーワーム

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ティンティンティントン…
物心付いた頃から、ふとしたときに突然頭の中にメロディーが響く。酷く落ち込んだときだとか、突然、どこかから「 ティンティンティントン…」と聞こえてきて、萎れたタンポポが精気を取り戻すみたいに僕が少しずつ元気になると、用済みとばかりにフェイドアウトしていく。
四三年間、これまでどこで聞いたメロディーなのか全く心当たりがない。他の人には聞こえていないみたいで、イヤーワームという病気の一種かもしれないらしい。

突然鳴ったスマートフォンの画面に兄の名前が表示される。「母さんがもう最後だって。早く来てくれ。」

急いで病床に行くと、肌も髪の毛もシーツに溶け込むほど白く小さな母が横になっていた。兄の横でただ時間が流れ、最後くらい気持ちを伝えたいのに、言葉が出てこない。
ティンティンティントン…
「産んでくれてありがとう。」

「この曲な、母さんが好きで昔から聴いてたらしい。」
その他
公開:24/09/24 21:39

JANJUN( 東京都 )

小説初心者です。
少しずつ経験を積みたいと思います。

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