空猫

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秋の空模様は変わりやすい。
それもそのはず空猫がやって来るから。
空猫は、大好物のいわし雲を見つけるため、日本列島を縦横無尽に駆け巡る。この動きが時に秋晴れに、また時に秋雨に、さらに時に台風になるから目まぐるしい。
空猫は、いわし雲を食べてお腹がいっぱいになると動きが止まり静かになって眠る。すると空はオレンジ色に輝いて夕焼けになる。夜になれば、空猫のキャッツアイがキラッと光って天空の星たちの中でひときわ目立つ。
気分屋の空猫がゴロゴロと機嫌良く鳴くと遠雷が、急にシャーと威嚇すると落雷があるから大変だ。
空猫のお蔭で地上では、野菜や果物、稲などが実りの秋を迎え、色鮮やかな紅葉となる。
シベリアから冬将軍が南下すると木枯らしが吹いて紅葉が散り始める。
寒さが苦手な空猫は、日本列島を離れ暖かい南国の空へと逃げて行く。
でも空猫は、来年の秋も日本列島にやって来るだろう。大好物のいわし雲があるから。
その他
公開:24/09/22 06:39
いわし雲 秋晴れ 秋雨 台風 夕焼け

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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