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川沿い。初秋の夕景。
男の子が自転車の練習をしている。
何度も何度もこけるのを彼の母親が起こしては両手で頬を包むように涙を拭いてやり、また自転車を押してやる。
病室。桜の頃の夕景。
男の子は病床の父親に自転車をねだった。退院したら教えてやると父親が言ってくれて小躍りし喜んだ。
だが、残念ながらその日は来なかった。
それ以来、男の子も母親も自転車の話を出さなかった。
食卓。晩夏の夕景
もう大丈夫そう。
母親が急に思い出したように演技して自転車のことを切り出すと男の子は泣いて喜んだ。
母親も泣いて喜んだ。
ゴー!
母親の手を離れた自転車は男の子が歯をくいしばりペダルを踏みしめ滑っていく。
男の子は秋の風をたっぷり吸いこんでガッツポーズを見せた。
母親は真っ赤な空を背景に男の子と彼の父親が美しい絵になっているのをずっと眺めていた。
男の子が自転車の練習をしている。
何度も何度もこけるのを彼の母親が起こしては両手で頬を包むように涙を拭いてやり、また自転車を押してやる。
病室。桜の頃の夕景。
男の子は病床の父親に自転車をねだった。退院したら教えてやると父親が言ってくれて小躍りし喜んだ。
だが、残念ながらその日は来なかった。
それ以来、男の子も母親も自転車の話を出さなかった。
食卓。晩夏の夕景
もう大丈夫そう。
母親が急に思い出したように演技して自転車のことを切り出すと男の子は泣いて喜んだ。
母親も泣いて喜んだ。
ゴー!
母親の手を離れた自転車は男の子が歯をくいしばりペダルを踏みしめ滑っていく。
男の子は秋の風をたっぷり吸いこんでガッツポーズを見せた。
母親は真っ赤な空を背景に男の子と彼の父親が美しい絵になっているのをずっと眺めていた。
公開:24/09/21 07:57
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