茜のマリオネット

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赤い花を形作っていた糸が、次々にほどけてまだ青い秋の空へ伸びていく。
一面真っ赤に染まっていた彼岸花畑には、緑色の爪楊枝みたいな茎だけがポツポツと残され、そこから伸びた無数の赤い糸が空に浮かぶ雲に繋がる。柔らかな秋風が茎だけとなった彼岸花畑を通り抜けると、意志をもったように茎が赤い糸で雲を操り始めた。雲はひつじ雲へ変わり、赤い糸で誘導されるがまま空をのんびりと歩いていく。

ひつじ雲がいっぴき~

ひつじ雲がにひき~

電柱にとまる烏がひつじ雲をカァ~カァ~と鳴いて数え始めると、その声に耳を傾けていた秋の青空は次第にウトウトしだしてゆったりと瞳を閉じていき、空はすっかり茜色に染まった。

眠りについた空を見届けてから、烏は夕空を飛んで赤い糸をプツプツと切っていく。シュルルと地上へ帰っていった赤い糸は再び彼岸花となり、解放されて自由気ままに夕空を歩き出した橙色のひつじ雲の群れを見送っていた。
ファンタジー
公開:24/09/16 20:07
夕暮れ 彼岸花 秋は赤のイメージ

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

読んでくれてありがとう!

寒い季節になったから、気が向いた時にふらりと立ち寄ってゆるーく投稿しています。

 

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