ワルツ

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少し記憶の甘くなった祖母の体調のよい日は昔話の聞き役を務める。
音楽教師を志し音楽学校で学んだ頃、研究生のアマノさんから作曲を教わったという。
彼は数多くの美しいワルツを書いたそうだ。
「恋なんて知らない二人が神妙な顔を突き合わせて恋の調べを作るのよ」
祖母は首を少し傾けながら小さく笑う。
その後の大戦でアマノさんは戦地に赴いた。

祖母は今でも変わらずアマノさんのことが好きなのだ。
話しながら指が小さくワルツを刻んでいる。
青春
公開:24/09/16 11:08
更新:24/09/16 14:29

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