満ち満ちる

僕は妻の声が世界で一番大好きだ。だから妻の声を聞き間違えるなんて絶対ない。
妻には双子の姉がいる。見た目はもちろん、声だってそっくり。だけど僕が妻の声を聞き間違える事は絶対にない。
僕は妻の声が世界で一番大好きだからね。声に込められた感情を感じ取れるんだ。
僕の名前を呼ぶ妻と妻の姉。妻の声には「間違えないで」と不安が詰まっている。
今では僕があまりにも正解するものだから妻の声には「今回も当てるわ」と自信が詰まっている。
親戚の集まりでやる余興。やれやれ…なんて思いながら僕も妻もまんざらではない。
その反面、妻の姉が面白くないのではないかと不安になる。
「そんな事ないわよ。貴方達のラブラブっぷりを見て、ウチの旦那も私の声をちゃんと聞いてくれるようになったの。おかげで聞き分けのいい男になったわ。世の夫は妻の声フェチになるべきね」
どうやら僕らのおかげで妻の姉は幸せと持論に満ち満ちているようだ。