スイッチ

0
2

突如巨大スイッチが駅前に出現した。
まず皆がとった行動は遠巻きに写真を撮ることである。
会社員は会議があると言い。主婦は機械に弱いと言い、警察官は被害届けがないと言い、役人は管轄外だと言った。
接触防止の防護壁工事にも見えない方が危険だと横槍が入った。
人はなぜか解決より揉める方向に力が入る。

スイッチが街に馴染んできたある朝、母親と幼児の平和な散歩風景があった。
突然、母親が悲鳴を上げた。
幼児がスイッチに突進したのである。
歩けないのに突進すると言う矛盾は幼児にはよくあることだ。
彼はそのままスイッチに抱きついて倒してしまった。

人々はそのスイッチの意味をやっと知ったのだ。
それは真の勇者を知るためのスイッチであった。
スイッチを取り巻いて誰も何もしなかった。
称賛の拍手。
当人は口をぽかんと開けている。
勇者は多くを語らない。また自分がそれであることに気付いていないし興味もない。
公開:24/09/18 09:41
更新:24/09/18 18:16

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容