満ち満ちる

私には昔、幼馴染の男の子がいました。
彼はいつも全身を怪我していて、私はいつもその手当をしていました。
私が「もう怪我をしないで」ってお願いしても「これが僕の仕事だから」って困った顔で笑うんです。私はそんな彼が大好きでした。
ある日、彼が大怪我を負っていました。私では治せません。
私は彼の手を取り「早く病院へ！」と言いましたが彼は首を縦に振ってくれません。
それに腹を立てた私は彼の手を振り払い、脇目もふらず走り出し…車にはねられました。
ですが私は奇跡的に無傷。
あとで聞いた話ですが、私が遊び場にしていた神社には怪我を引き受けてくれる男の子の神様がいるそうです。
彼は私の怪我を引き受けてくれたのだと知りました。
お礼を言いたかったのですが以来彼とは会えていません…
あれから６０年。最近、孫が救急箱を持って神社に行くようになりました。
聞けば、神社にいつも全身を怪我した男の子がいるそうです。