満ち満ちる

私の生まれ故郷A国はB国と長い間戦争をしている。
誰も戦争の理由を覚えていない。何の為に戦っているのかも分からない。
長い間、B国への敵意と恨みだけで満たされた戦争。意味も意義もない戦争に私は、A国を捨てた。
このまま国にいれば、私もいずれ徴兵されるだろう。まっぴら御免だ。
A国を出て、第２の故郷を探す。
「あんた、A国から来たのかい！？早く国に戻って、戦争をやめさせてくれ！あの戦争のせいで物価が上がりまくってたまったもんじゃないよ」
そんな事をよく言われた。A国とB国の戦争は二つの国が争うだけに非ず。
その混乱は世界にも満ちていた。中には混乱を楽しみ、戦争の勝者を賭けの対象にする者もいた。
私はその人達に聞いた。戦争が終われば、平和になるのか？と。
だが皆、首を傾げる。今、平和な国なんてどこにもない。
何をもって平和と言えばいいのか分からず、皆の頭には平和とは何かという疑問が満ちている。