作案山子(さっかかし)

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ふむ……

緑の苗がポツポツとした田んぼの真ん中で、気難しそうな案山子が両肩に雀をのせてゆらゆら揺れている。

「先生!あーそぼ♪」

無邪気に足下へじゃれつくオタマジャクシたちにオホン!と咳払いをする案山子。

「こらこら、先生は締切までに稲作文を完成させないとならないんだからね。あっちで僕らと遊ぼう」

気を利かせた雀がオタマジャクシたちを連れていき、かくれんぼを始めた。

作家の案山子である作案山子先生は、今年も豊かな稲作文の執筆の為に体を揺らして考え、ついでに田んぼを荒らしにくるカラスも追い払う。

月日は流れる。
緑の波の中、揺れる先生を指揮者に蛙たちが大合唱。
色づいた稲穂の囁きに雀がうっとりする横で、ツンツクテンと移動する先生。

稲刈りの後、月光に照らされた田んぼの土には月光用紙が現れて、黄金の文字で綴られた蛙のオーケストラの物語を、鈴虫がコロコロと歌うように読んでいた。
ファンタジー
公開:24/09/12 12:00
お散歩中にめっちゃ渋くて かっこいい案山子に出会って 書いた(笑 予約投稿

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

読んでくれてありがとう!

寒い季節になったから、気が向いた時にふらりと立ち寄ってゆるーく投稿しています。

 

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