自分助け

これは私が学生だった頃の話だ。寝坊して、急いで家を出たせいか、財布を忘れてきてしまった。
切符が買えず、券売機の前で焦る私。
すると見知らぬおばさんが「どうぞ。使って」と千円札を渡してくれた。
私はそれを受け取ると急いで切符を購入し、お礼もそこそこに電車へと駆け込んだ。おかげで遅刻も免れた。
改めてお礼を言いたい。千円を返したい。そう思うも、あの時のおばさんに会える事はなかった…

あれから私もすっかり歳を取り、おばさんになってしまった。
今日は電車で出かける用があり、久しぶりに朝の駅に行ってみると、そこに昔の私がいた。
財布を忘れたのか、券売機の前で焦る女子高生。
そんな彼女に私は「どうぞ。使って」と千円札を渡した。
彼女はそれを受け取ると急いで切符を購入し、お礼もそこそこに電車へと駆け込む。
もしかしたら、過去に私を助けてくれたおばさんの正体は、私だったのかもしれないと思ってしまった。