トロールの義眼

私には生まれつき、目玉がありません。病気や欠損ではありません。先祖返りです。
私のご先祖様は森の賢者と呼ばれるトロールで、目玉を仲間内で使い回す文化があるそうです。
だから両親から私の話を聞いたトロールは「人間の世界で生きていくには眼が必要だ」と、目玉を私にくれました。おかげで私は目の見える生活ができました。
幼い頃からトロールに恩返ししたいと考えていた私。いっぱい勉強して、義眼を作る研究者になりました。
トロールの目玉を調べ上げ、それを元に何度も義眼を作り、私の目に嵌めてみました。今の私の両眼はそうして完成した義眼です。
私はトロールに目玉を返しに行きました。
返ってきた目玉を嵌めるトロール。まるで見ていたかのように私を褒めてくれました。
トロールの目玉は見たものを記憶し、それを他者が嵌める事で記憶の共有が出来るそうです。
思わぬ方向から私が何度も体験してきたデジャヴの正体を知りました。