言いなり

0
3

「ちょっと、脱いだ靴下は脱衣所のカゴに入れてよ」
「うるさいなあ」

「食べた後のゴミは置きっぱなしにしないで」
「片付けといてくれ」

「お菓子それくらいにしときなさいよ」
「俺の勝手だろ!指図するなよ」
「もう…」

 自己中心的な父に母が困り果てていた。

「お母さんの言うこと聞きなよ」

 私が母を援護しようとしても

「俺は誰の言うことも聞かん!」

 の一点張り、父は頑なな態度を曲げない。もはや人の言う通りにしないことに美徳すら感じている様子だ。

 だから私はボイスチェンジャーで自分の声を変えてみた。

「ゴミをゴミ箱に捨ててください」

 すると父はあっさりその通りに動いたのだった。

 はっと我に返って「しまった、つい」と気まずそうな顔をする父。

「言う通りにできるじゃん」

 私はいつも父が言いなりになっているカーナビの声で笑った。
公開:24/09/07 21:59

山吹 橙子

山吹橙子(やまぶきとうこ)と申します。趣味で小説にチャレンジ中の会社員です。
楽しい話が書きたくて日々精進しています。
ど素人のひよっこですがよろしくお願いします!

※コメント下手ゆえ、⭐︎の押し逃げをすることがあります。お許しください。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容