満ち満ちる

若い頃の私は心霊スポットに赴いては幽霊を撮影し、その写真を売って日銭を稼いでいた。無礼極まりない若造だった。
そんな私が今、町の片隅で小さな撮影スタジオを経営していると言ったら幽霊達は驚いていたよ。
心霊スポットは危険な場所が多いからね。私も所帯を持った事で心霊写真家から引退するつもりだった。
だが、それを許さなかったのが当時迷惑をかけてしまった幽霊達だ。
幽霊の写真が撮れるのなら、それをもっと活かした写真スタジオにするようアドバイスしてきた。
そんなおせっかいな幽霊達のおかげで私の店は盆と彼岸は大忙しさ。
あの世から戻ってきた幽霊達が「家族写真を撮りたい」とこぞってやってくる。
幽霊達はもちろん、現世に残された家族もその写真に喜んでくれる。
「本当に見守ってくれているんだ…」と涙を流す人も多い。
昔は雑誌に載った写真に一人満足していた。
今ではウチを訪れたお客様と満足を分かち合っている。