泡婚式

泡婚式のクライマックスは、新郎新婦の泡を合体させる瞬間だ。泡のタキシードと泡のドレスを身にまとった新郎新婦が、緊張の表情で神父の前に立つ。
神父は、おごそかに誓いの言葉を読み上げつづける。
「新郎新婦は……幸福なときも病めるときも……合体した泡が破裂して消滅するまでお互いを愛し続けると誓いますか」
二人の手が堅く結ばれる。参列者はシャッターチャンスとばかりに新郎新婦にスマホを向ける。
新郎が力強く断言する。
「誓います」
新婦が静かに口を開く。
「誓います」
「では、誓いの合体を！」
式場のオルガンが一斉に鳴り響く。二人の泡が七色に輝き、新郎は新婦をそっと抱き寄せてキスをする。参列者が向けるスマホからシャッター音が鳴り響く。
二人の泡は交じり合い、そしてひとつになった。
この泡がいつまで割れずに保てるのかは、これからの二人次第だ。いつまでも泡い恋でいられますように。新郎新婦は二人で願った。