カメレオンあんぱん

シャッター通りの外れの店に入ってみるとパン屋。
「いらっしゃいませ。あんぱん屋です」
「なるほどあんぱんばかり」
「こしあんあんぱん、粒あんあんぱん」
「一般的だ」
「白あんあんぱん、青えんどう豆たっぷりのうぐいすあんぱん。北海道産パンプキンを使ったかぼちゃあんぱんはいかがですか」
「甘そう」
「塩あんぱん、焼きいもあんぱん、串だんごあんぱん、黒ごまあんぱん、きなこあんぱん」
「よだれが垂れる」
「和栗の粒入マロンあんぱん、メロン味のメロンあんぱん」
「その隣は？」
「当店独自のカメレオンあんぱん」
「パンの色がカメレオンみたいに変わる？」
「さあ、試して下さい」
「面白そうだ」
カメレオンあんぱんを買って、家に帰ってまじまじと見た。外皮が動いてひび割れて、ぱっくりと裂けてなかに目が二つ光る。あんぱんは解かれるように伸びてカメレオンの姿を現した。おお、黒い頭のあんぱんカメレオンだったか。