満ち満ちる

僕の彼女は泣き虫ですぐに涙する。
僕はその涙の中を泳ぐ獲物を釣り上げる。
涙は人間が作る一番小さな海であるとアンデルセンは言った。なら、その中に魚介類がいても何の不思議もない。
ただ、僕のような小人が食べるには問題のないサイズだが、人間ほどの大きさとなると涙の中にいる獲物を見つけにくいし、食べるほどのものでもない。人間はそれを目に入ったゴミとしか思っていないからね。
僕は今日も彼女にあらゆる涙を流させる。感情によって獲れる魚介類も変わってくるんだ。
だから僕は彼女の泣き虫を喜んで受け入れる。
…でさ、僕は彼女にいつか結婚指輪を渡すつもりなんだ。婚約指輪はもう渡している。玩具みたいだって涙を流して笑われたよ。
結婚指輪を渡す時は僕、打ち出の小槌で大きくなろうと思う。
その時の涙からは何が獲れるだろう？残念だけど、その時はもう食べられそうにないね。
その代わり、幸せでお腹いっぱいになりそうだ。