泡の砂

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この島は「泡の砂」でできている。
サンゴ礁の真ん中にある小さな島。サンゴの隙間に泡のような中空の砂が集まり、積み重なり、いつしかウミガメが上陸できるだけの広さを持つ小島にまでなった。
この島には川も山もなく、雨が降ってもすぐに浸透してしまうため木も草も生えない。緑がないから動物も昆虫もいない。海鳥もこの島を訪れない。
ただ、砂があるだけ。
この島の表面をさっと波が撫でていく。「泡の砂」は軽いので海水の中で浮き上がり、そのまま波に攫われていく。
「泡の砂」が失われる一方で、波がどこからか「泡の砂」を運んできて、サンゴ礁の隙間に置いていく。
このようなやり取りが何万年と続いている。
数年ぶりにウミガメがやってきた。彼女は「泡の砂」に穴を掘り、卵を産み落とすと、「泡の砂」をかけて帰っていく。
「泡の砂」でできた島は、今日も、太陽の下にある。
ファンタジー
公開:24/09/06 15:46

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