時間泥棒

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近頃の姉は落ち着きがない。昔はどんなにくだらない話でも耳を傾けてくれたのに、いまは忙しそうにメイクを始めたり、洋服選びに時間をかけて悩んでいる。
ある日とうとう理由を問い詰めると、姉は思い詰めた表情でこう打ち明けた。

「ある人に盗まれちゃったのかもしれないのよ」
「盗まれたって……なにを?」
「わたしの時間。1日のほとんどをその人のために費やしてしまうの」
「どういうこと?」

詳しく聞き出そうとしたけど、姉は頬を染めたまま口を閉ざしてしまった。業を煮やした私は、姉の時間を盗んだ泥棒のところへ殴り込みに行った。
泥棒は長時間に及んだ私のクレームを嫌な顔ひとつせずに聞き入れると、姉と交際していることを話したうえで付け足した。

「僕はもしかしたら本当に泥棒なのかもしれません。あなたの貴重な時間をこうして奪ってしまいましたからね」
「くぅ……!」
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公開:24/09/05 11:33

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。

清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)

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