小人と人間と結婚指輪

結婚指輪。その言葉に私はいい思い出がありません。
私が若い頃は今と違い、異種間恋愛が盛んではありませんでした。それが小人と人間ともなると猶更です。
結婚を控えていた私達は指輪を見に行ったのですが…店員は私を見て鼻で笑ったのです。「玩具売り場に案内しましょうか？」って。
おかしな話ですよね。ここは巨人用の指輪を取り扱っているのに小人用はないんですよ。大きさを考えると儲けにならないからでしょう。
それでも夫は私が気に入った指輪を買ってくれました。
その指輪は当然、嵌められません。人間サイズのそれは私の胴より細く、腕より太いのです。
眺める事しか出来ない結婚指輪。彼はそれをスノードームの中に飾りました。
するとスノードームの中で見る指輪は雪だるまに早変わり。頭の部分の宝石がきらりと光ります。
溶ける事のない雪だるま。私は今もそれを夫と眺めます。
結婚指輪を眺めるこの時間が、今も私は大好きです。