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「結婚おめでとう、まさかあんたが先に結婚しちゃうなんてね」
小学校からの幼なじみが結婚するというので、二人で祝杯をあげにきた。
うれしそうに笑う彼。
グラスに注がれたビールの泡が目に入る。
「淡いっていう字、変だよね」
「また変なこと言うなぁ」
「だって、さんずいに炎だよ。全然淡くないじゃない」
私の言葉に彼は怪訝な顔をする。
「私はね、“泡”っていう字の方が合うと思うの」
「“泡い”?」
指で字を書いてみせた彼に、コクリとうなずく。
「泡い初恋、泡い恋心」
私の言葉に、彼の表情が固まる。
やっぱりバレてた私の気持ち。
「がんばっておさえてみても湧き上がる、泡のような恋心」
「あのさ、俺——」
「時間が経てば、跡形もなく消える」
私がにっこりと微笑むと、彼は安堵の表情を見せる。
その表情にすら、次から次へと泡が湧き出る。
早くはじけて、跡形もなく消えてしまえばいいのに。
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公開:24/09/01 22:12

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