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我々の漁協では、泡船が流行した。船体は泡を固めたもので軽くて丈夫、エンジンに泡を送り込めば、泡が弾ける時のエネルギーを動力に代えて進む。泡はどのような種類でも良いが、洗剤の泡がエンジンとぴったり合うようだ。
「若造、しっかり吹けよ」
不漁のせいか、船長の機嫌が悪い。私は、シャボン液を一生懸命拭いて、泡を作っていた。
顔を泡まみれにしながら、エンジンが温まったことに満足した頃、後ろから猛スピードで追いかけてくる船があった。うちの漁協の大型蟹工船だ。向こうの船長が慌てて手を振ってきたので、こちらも振り返した。
「た、助けてくれ! 大量の蟹が泡吹いて、エンジンが暴走した!」
「蟹に水かけろ、水!」
うちの船長が怒鳴りながら蟹の泡対処法を伝える頃には、蟹工船は我々の船を追い抜き、船尾の満載の蟹を見せつけながら、水平線に向かって小さくなっていた。
「若造、しっかり吹けよ」
不漁のせいか、船長の機嫌が悪い。私は、シャボン液を一生懸命拭いて、泡を作っていた。
顔を泡まみれにしながら、エンジンが温まったことに満足した頃、後ろから猛スピードで追いかけてくる船があった。うちの漁協の大型蟹工船だ。向こうの船長が慌てて手を振ってきたので、こちらも振り返した。
「た、助けてくれ! 大量の蟹が泡吹いて、エンジンが暴走した!」
「蟹に水かけろ、水!」
うちの船長が怒鳴りながら蟹の泡対処法を伝える頃には、蟹工船は我々の船を追い抜き、船尾の満載の蟹を見せつけながら、水平線に向かって小さくなっていた。
SF
公開:24/09/01 21:29
はじめまして。田丸先生の講座をきっかけに小説を書き始めました。最近は、やや長めの小説を書くことが多かったのですが、『渋谷ショートショート大賞』をきっかけにこちらに登録させていただきました。
飼い猫はノルウェージャンフォレストキャットです。
宜しくお願い致します
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