泡物園

休日に家族を泡物園へ連れて行くことにした。このあたりで娘の株を上げておかないと、父親の尊厳がなくなる。

「朝早く並んだ方がいいらしいよ」
「大丈夫だよ、父さんに任せろ」

最初はメレンゲの檻に行った。すでに一時間待ちで、ようやく檻の前にたどり着いたら空っぽのボールと泡立て器が昼寝をしていた。檻の隅にメレンゲクッキーがフンのように転がっていた。慌てて娘を連れてシャボン玉とのふれあい広場に行った。ふれあい待ちの客は、柵の中でストローを握って暴れている子供を母親が慰めているのを見つめていた。

　他の檻へ。

　剃り終わった男のあご。
　気の抜けた、ぬるビール。

　結局、泡は一つも見れなかった。

「だから私は早く行こうって言ったのに」

娘は持っていたポテトを私に投げつけて、入園口へ走っていった。家族サービスが全て水の泡だ。突然、同じように泡が見れなかった客たちが私の周りに集まってきた。