あわすくい

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夏祭り会場で、屋台のおっちゃんに呼び止められた。
「兄ちゃん、あわすくいやってくかい?」
「あわすくい?」
「そう。金魚なんて、水槽買って、餌やって、水替えて。大変で今どき流行らないのよ。どうだい?」
僕は百円を渡してポイをとおわんを受け取った。
先客の浴衣姿の女の子たちが楽しそうにあわすくいをしている。
プールの中には何も見えないが、とりあえず見様見真似ですくってみた。
「お、兄ちゃん、うまいね」
手ごたえが無く、よくわからないが、僕はあわすくいがうまいらしい。
「すごい」
「上手」
「いいなあ」
やがてポイは破れてしまった。
持ち帰り袋に水が注がれて、はじめてキラキラと七色に光る大小さまざまなあわの粒が見えた。
「グラスに注いで1週間くらいはもつからね。いらなければその辺に撒いても、下水に流してもいいから」

その後、水を替えながら2年。僕は今、水槽いっぱいのあわと一緒に暮らしている。
その他
公開:24/09/01 20:15

ぱせりん( 中四国 )

北海道出身です。

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